◆過去2回流産なら80%、3回70%、4回60%、5回50%の方が次の妊娠で出産できます。
着床前染色体異数性検査によって出産できるようになるという研究成果はありません。
流産した胎児(胎芽)にみられた常染色体トリソミー(染色体が3本)のうち最も頻度が高いのは、16番染色体であり、22番、21番の順番でした(図10、文献38)。着床前染色体異数性検査preimplantation genetic testing for aneuploidy (PGT-A)とは、受精卵の異数性を調べて、正常胚を子宮内移植することで流産を予防する技術です。日本産科婦人科学会は、生命の廃棄、優生思想を助長するという倫理的理由のため、PGT-Aを長らく禁止してきました。しかし、日本でも妊娠の高年齢化が進み、社会のニーズが高まったとして、2014年3月からPGT-Aの議論が始まりました。
原因不明習慣流産は、2回流産なら80%、3回70%、4回60%、5回50%の方が次の妊娠で出産できます。40歳以上の患者さんでも58%が出産しています(文献40)。「実施しなかったらどうか」ということを説明されているかが重要です。
PGT-Aは理論的に出産率がよくなりそうに思えますが、2007年には、高齢不妊女性を対象とした無作為割り付け試験によって出産率が悪くなることがわかりました。生検(細胞を採取)によるダメージによって妊娠率が低下するためです。その後、生検、診断技術が向上しましたが、未だに習慣流産(不育症)において出産率改善は証明されていません。
2016年に発表された原因不明習慣流産に対するPGT-Aと待機療法の比較試験では出産率、流産率ともに差はなく、PGT-Aの効果は認められませんでした(表11)。この研究では既往流産の胎児染色体異数性は調べていません。
日本産科婦人科学会は倫理的理由からPGT-Aを禁止してきましたが、日本人女性の妊娠年齢の高齢化によって社会のニーズが上昇したことから習慣流産と反復体外受精不成功例を対象として、PGT-Aが出産率を改善するかを調べるための臨床研究を実施しました。
- 2回以上の流産を経験・不妊症を合併しており体外受精を既に実施している
- 過去の流産の胎児(胎芽)染色体異数性が確認されている
- 35-42歳の患者さんを対象として胚盤胞をマイクロアレイCGH法によって診断する臨床研究が実施されました。同じ状況の患者さんを対照としました。
その結果、患者さん当たりの出産率はPGT-A群と対照群で差はありませんでした(表12、文献41)。流産率も変わりませんでした。胚移植できた患者さんに限定するとPGT-A群で出産率は上がりました。また、PGT-A群では生化学妊娠が減ることがわかりました。
すでに不妊症のために体外受精を行っている患者さんの中で、胚盤胞が多数得られる方にはメリットがあることがわかりました。自然妊娠できる不育症患者さんにおいてどこまでメリットがあるかはわかっていません。
