私たちの先行研究では、基礎体温表を記録してもらい高温5-9日にProgesterone値(P)測定を行い、黄体機能不全 (P<10ng/ml)と診断されたのは23.4%でした。しかし、黄体機能不全のあるなしでその次の流産率を調べたところ、正常群、異常群ともに変わらないという結果が得られました(文献33)。黄体機能は毎周期ごとに異なるのでこれだけで評価するのは難しいと思われます。
英国36施設とオランダ9施設におけるprogesterone in recurrent miscarriage (PROMISE) trialによって、1568人の原因不明習慣流産患者に対するプロゲステロン膣座薬の効果を調べる二重盲検試験が行われました(文献34)。836人が1年以内に妊娠し、プロゲステロン群では65.8%(262/398)、プラセボ群では63.3%(271/428)が生児獲得し、有意な改善効果を認めませんでした。両群間の流産率(32.2, 33.4)、死産率(0.3, 0.5)、早産率(10.3, 9.2)、先天異常率(3.0, 4.0)、泌尿生殖器先天異常率(0.4, 0.4)にも有意差を認めませんでした。危惧された泌尿生殖器系を含む先天異常の上昇はありませんでしたが、出産率改善もみられませんでした。
同じグループが今度は妊娠初期に出血を経験した女性4153人を対象としてプロゲステロン膣座薬の効果を調べたところ、プロゲステロン群では75%(1513/2025), プラセボ群では72%(1459/2013)が出産に至り、改善傾向にありましたが、有意とはいえませんでした(文献35)。
プロラクチンとはお乳を分泌するホルモンです。これは非妊時にも脳から分泌されており、高プロラクチン血症は排卵障害をひき起こし不妊症と関係することが知られています。高プロラクチン血症が習慣流産を起こすかはまだはっきりしていません。妊娠9週までブロモクリプチンを投与することで成功率が改善できたとする報告がひとつありますが、その後それを追試した報告はありません。
糖尿病、甲状腺機能低下症が流産を起こすといわれてきました。糖尿病と診断される例は不育症の1%程度のため、質の高い研究が不足しています。潜在性甲状腺機能低下は約15%にみられますが、治療の必要性についてはまだはっきりしていません(文献36)。私たちの研究でも潜在性甲状腺機能低下は約14.4%にみられ、レボチロキシン投与群、非投与群、甲状腺機能正常群で出産率の差は全くありませんでした(文献7)。さらに、甲状腺関連自己抗体である抗TPO抗体陽性患者に対する治療の効果は認めないことも明らかになりました(文献37)。しかし、糖尿病や甲状腺疾患は流産だけでなく、その後の胎児発育や発達とも関係しますので検査は必要と考えています。
多のう胞性卵巣症候群という内分泌疾患と流産の関係が報告されています。月経周期が長いことと超音波検査による卵巣の特徴的所見によって診断します。反復流産患者さんの約5%にみられ、糖尿病、甲状腺機能低下症、高プロラクチン血症を伴うことが多いため、これらが一つの疾患群である可能性を考えています。ただし、多のう胞性卵巣症候群に対する流産予防はまだ確立されていません。
