不育症の4大原因は抗リン脂質抗体症候群、子宮形態異常、夫婦染色体異常、胎児(胎芽)染色体異常です(文献1-3)。抗リン脂質抗体約10%、夫婦染色体異常6%、子宮奇形3.2%の頻度でみられます(図3-A、文献6)。国際抗リン脂質抗体学会の定義を満たす“本物の”抗リン脂質抗体症候群は約4%です。内分泌異常には糖尿病、甲状腺機能低下症が含まれますが、最近の研究では潜在性甲状腺機能低下症は不育症の原因ではなく、治療によって出産率は改善しませんでした(文献7)。
LANCET series “Miscarriage 3”はエビデンスを4つのレベルに分類し、検査結果が流産を予知するもの、もしくは、検査結果に基づいて治療をした場合に出産率が良くなるものを推奨しました。不育症の検査として沢山の検査が行われていますが、ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、経膣超音波検査、甲状腺機能検査、カップルの染色体検査、流産絨毛(胎児・胎芽)染色体検査を推奨しました(表1,文献8)。
| 検査結果と流産との関連の証拠はありますか? | その関連が流産のリスクに寄与しているという証拠はありますか? | その検査結果には予後の価値があるという証拠はありますか? | 検査結果に基づいた治療が出産率を改善するという証拠はありますか? | |
|---|---|---|---|---|
| Lupus anticoagulantと抗カルジオリピン抗体 | yes | yes | yes | Weak evidence |
| 抗β2glycoprotein I抗体 | possibly | possibly | No data | No data |
| 血栓性素因: FV Leiden, prothrombin, protein C, protein S, antithrombin 欠損症 | Weak evidence | unclear | yes | no |
| 胎児[胎芽]染色体検査 | yes | yes | Weak evidence | no |
| カップルの染色体検査 | yes | yes | yes | no |
| 子宮先天異常を調べるための超音波検査 | yes | possibly | No data | Little data |
| 甲状腺機能低下症 | 散発流産のみ | 散発流産のみ | yes | yes |
| 潜在性甲状腺機能低下症 | yes | yes | Not clear | Not clear |
| 免疫学的検査(HLA, NKなど) | Little data | Little data | No data | No data |
| 抗核抗体 | yes | Little data | unclear | No data |
| 多膿疱性卵巣症候群(内分泌検査と超音波検査〕 | yes | Little data | unclear | No data |
| ビタミンD | possibly | possibly | unclear | no |
現時点での不育症の4大原因は、下記のとおりです(表2)。
- 抗リン脂質抗体症候群
- 子宮形態異常
- 夫婦どちらかの染色体均衡型転
- 胎児染色体数的異常
胎児染色体検査は流産手術の時にしか実施できないこと、限られた施設でしか検査できないことから、初診で来院された患者さんの過去の流産胎児について実施されていることはほとんどありません。そのために、“原因不明”が70%と言うことになります(図3-A)。しかし、女性の加齢によって増加する胎児染色体数的異常は、適切に調べれば41%が原因となっていることがわかりました(図3-B、文献9)。胎児染色体正常の真の原因不明は約25%に留まります。
推奨される検査を原因別に示しました(表2)。詳細については項目別に解説します。
( )内の数字は保険点数です。ループスアンチコアグラントは2種類を実施する必要がありますが、どちらか一つしか保険適用されていません。この点は課題です。
保険適用されていない検査、適用外治療は、それを行っても出産できるようになることがはっきりと証明されていません。そのような研究的検査は、患者さんに説明をしたうえで同意書に署名をすることが「臨床研究法」で定められました(平成29年4月)。自費診療による治療を勧められた場合、「臨床研究法」に従って倫理委員会の承認を得た治療であるのか、主治医から説明を求めることをお勧めします。
| 不育症の原因 | 検査 | 治療もしくは対策 | 治療の現状と問題点 |
|---|---|---|---|
| 抗リン脂質抗体 |
● ループスアンチコアグラント* リン脂質中和法 APTT(265) 希釈ラッセル蛇毒法 RVVT(265) ● (β2GPI)抗カルジオリピン抗体(223)** ● β2グリコプロテインI IgG ※ いずれも12週間持続 |
アスピリン/ヘパリン療法 |
■ 出産率70-80% ■ 測定が適切に行われていない |
| 先天性子宮形態異常 | 3D超音波検査(530) | 手術 | ■ 手術によって出産率が改善するか? |
| 夫婦染色体異常(均衡型転座) | 染色体検査(2874) |
着床前染色体構造異常検査 遺伝カウンセリング |
■ 着床前診断によって流産は減少するが、出産率は改善しない |
| 胎児染色体異常 | 絨毛染色体検査 |
着床前染色体異数性検査 遺伝カウンセリング |
■ 着床前診断によって出産率は改善しない |
* 非妊時に測定する。リン脂質中和法と希釈ラッセル蛇毒法は別の検査であり、両方とも測定する。
** 抗CL・β2GPI複合体抗体もしくは抗カルジオリピン抗体のどちらかでよい。
( )内は保険点数(2026年1月現在)
国際抗リン脂質抗体学会は、初期流産について3回以上の場合に測定するとしているが、欧州生殖医学会、日本では、2回以上の場合に検査できる。
